コンバイン搭載水分計
STORY03コンバイン搭載水分計 開発
正史次世代の精密農業を可能にする
収量モニタリング機能付き
コンバインの共同開発。
収量モニタリング機能付き
コンバインの共同開発。
技術一課 主幹 村松 健吾
技術一課 砂田 正史
日本人の主食であるコメの生産最前線では、IT技術を駆使した水稲精密農業(Precision Farming)の研究が急ピッチで進んでいる。その一環として、国の研究機関を中心に産官学共同のプロジェクトとして発足した「農業機械等開発緊急プロジェクト」。静岡製機は「水分計のシズオカ」のプライドを懸けて、この通称「緊プロ」の一翼を担った。
新時代のコメ作りを担うプロジェクト
農業従事者の減少や食の安全を求める声の高まりを受けて、IT技術を活用した効率的なコメの生産技術、“水稲精密農業”の確立が求められている。独立行政法人「生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)」では、この新しい農業の実現に向けたステップのひとつとして、収穫したコメの質量や水分値を測定しながら作業を行うことができる、収量モニタリング機能付きコンバインの開発をスタート。コンバインメーカー、計測機メーカーが集結し、新時代の日本の農業を切り拓くコンバインの開発に向けて挑戦を開始した。
「GPSを搭載して、圃場(水田)のどの場所でどんなコメがどれだけ収穫できたか、リアルタイムにモニターしながら収穫作業を行うコンバインです」と語るのは、当時開発リーダーだった川中道夫を支えた村松だ。「簡単に言えば、通常のコンバインに水分測定部と質量測定部を取り付けたもの。GPS情報により特定された場所でのコメの水分値と質量がわかります。刈り取ったコメの水分値はバラバラですので、一定の水分値に換算した質量とし、場所ごとのコメの収穫量を推定します。そうやって場所ごとのコメの収穫量と肥料の効果を細かく検証することでより品質を高めようという、精密農業の要となる製品なのです」。
「GPSを搭載して、圃場(水田)のどの場所でどんなコメがどれだけ収穫できたか、リアルタイムにモニターしながら収穫作業を行うコンバインです」と語るのは、当時開発リーダーだった川中道夫を支えた村松だ。「簡単に言えば、通常のコンバインに水分測定部と質量測定部を取り付けたもの。GPS情報により特定された場所でのコメの水分値と質量がわかります。刈り取ったコメの水分値はバラバラですので、一定の水分値に換算した質量とし、場所ごとのコメの収穫量を推定します。そうやって場所ごとのコメの収穫量と肥料の効果を細かく検証することでより品質を高めようという、精密農業の要となる製品なのです」。
誇りとプレッシャーのはざまで
静岡製機が担当したのは水分計だ。村松は続ける。「当社には、コメット-Sという穀物乾燥機用自動水分計がありますが、コメットが水分計の代名詞となるくらい、日本中の米農家の方に愛用されたヒット製品です。そのコメットの開発で得た水分計のノウハウが、静岡製機には脈々と流れている。コンバインに取り付ける水分計という前代未聞のテーマも、ウチならできるという自信がありましたね」。
ところが、前代未聞のこの装置は、次々と課題を開発陣に突きつけたのだった。
「求められる測定スピード、振動、ホコリ。何をとっても、それまで当社で生産していた製品では対応できない課題ばかりでした」。とはいえ、この新型コンバインの特徴は刈り取りを行いながら測定を行う点だ。通常なら、精密機械が避けるべき悪条件ばかりが揃った状況。どの課題も、宿命のように村松たちの前に立ちはだかった。
そのため、まず当時最も処理スピードの速かった輸出用モデルを連結。一度に大量の試料を流すことによるセンサーの感度低下に悩まされながらも、複数のセンサーを直並列に使用するという発想の転換で何とか目標値をクリアした。振動やホコリに対しては、共同開発者であるコンバインメーカーのノウハウを採り入れ、影響を受けやすい電子部品を樹脂で固めるなど、一歩一歩実用化に向けた前進を続けていった。
ところが、前代未聞のこの装置は、次々と課題を開発陣に突きつけたのだった。
「求められる測定スピード、振動、ホコリ。何をとっても、それまで当社で生産していた製品では対応できない課題ばかりでした」。とはいえ、この新型コンバインの特徴は刈り取りを行いながら測定を行う点だ。通常なら、精密機械が避けるべき悪条件ばかりが揃った状況。どの課題も、宿命のように村松たちの前に立ちはだかった。
そのため、まず当時最も処理スピードの速かった輸出用モデルを連結。一度に大量の試料を流すことによるセンサーの感度低下に悩まされながらも、複数のセンサーを直並列に使用するという発想の転換で何とか目標値をクリアした。振動やホコリに対しては、共同開発者であるコンバインメーカーのノウハウを採り入れ、影響を受けやすい電子部品を樹脂で固めるなど、一歩一歩実用化に向けた前進を続けていった。
困難を極めた実地試験
こうしてやっと道筋ができたとはいえ、コンバインに取り付けて実地試験を開始すると、チームは課題の大きさを改めて知らされることになった。村松とともに開発に取り組んだ砂田が、当時の苦労を語る。
「実は水分計開発にはライバルがいて、私たちが籾をすり潰すときの抵抗で水分量を計る“抵抗式”を採っていたのに対して、彼らは水分量によって変わる誘電率を利用した容量式を採っていました。ウチの方式では試料をすり潰してしまうので、当初は不利だと思われていたんです。しかし、容量式は振動によって誤差が出てしまう問題をどうしても克服できず、やがて残ったのはウチだけになりました」。だが、そのことでよりプレッシャーは強くなったという。「私たちには“水分計のシズオカ”の自負がありましたから、ウチでできなければどこでできるんだ、という強い想いがありました。直しても直しても安定しない測定値と戦いながら、その想いだけをエネルギーに取り組んでいたような覚えがありますね」。
実際に装置をコンバインに装着しての試験では稼働中のコンバインに取り付き、ホコリだらけになりながら装置の作動状態を確かめた。「今になってみれば楽しい思い出ですが」と砂田。「実地試験は収穫期にしかできませんから、追い込みのころには沖縄から北海道まで稲穂が色づくのを追って、実験と改良に明け暮れたくらいです」。
そして関係者が一同に会した公開試験。実用化に向けた厳格な検証が行われる中で、静岡製機の水分計は安定した測定結果を弾き出したのだった。
「実は水分計開発にはライバルがいて、私たちが籾をすり潰すときの抵抗で水分量を計る“抵抗式”を採っていたのに対して、彼らは水分量によって変わる誘電率を利用した容量式を採っていました。ウチの方式では試料をすり潰してしまうので、当初は不利だと思われていたんです。しかし、容量式は振動によって誤差が出てしまう問題をどうしても克服できず、やがて残ったのはウチだけになりました」。だが、そのことでよりプレッシャーは強くなったという。「私たちには“水分計のシズオカ”の自負がありましたから、ウチでできなければどこでできるんだ、という強い想いがありました。直しても直しても安定しない測定値と戦いながら、その想いだけをエネルギーに取り組んでいたような覚えがありますね」。
実際に装置をコンバインに装着しての試験では稼働中のコンバインに取り付き、ホコリだらけになりながら装置の作動状態を確かめた。「今になってみれば楽しい思い出ですが」と砂田。「実地試験は収穫期にしかできませんから、追い込みのころには沖縄から北海道まで稲穂が色づくのを追って、実験と改良に明け暮れたくらいです」。
そして関係者が一同に会した公開試験。実用化に向けた厳格な検証が行われる中で、静岡製機の水分計は安定した測定結果を弾き出したのだった。